個人民事再生とは
個人民事再生は、民事再生の個人版として 2001年にスタートした新しい制度です。将来において安定的に収入を見込むことができ、住宅ローンなどの担保債権を除く債務総額が5000万円を超えない個人債務者の債務整理を裁判手続においておこなうものです。個人民事再生は手続きが煩雑なため、通常は弁護士や認定司法書士に依頼しておこないますが、個人でも申立てはできます。
個人民事再生では、債務者の収入に応じ弁済額を決め通常3年間で完済する計画(再生計画)を立てます。この再生計画をもとに裁判所に申立て、認可されると3年間の弁済後、残りの借金は免除されるため債務者は大幅に借金を減らすことができます。
また、自己破産のように、マイホームを処分しなくても債務整理できる場合があるためマイホームを所有している人には大きなメリットがあります。
以下に、個人民事再生において@小規模個人再生A給与所得者等再生B住宅ローンに関する特則 という3つの要点を簡単に説明します。
- 小規模個人再生
将来にわたり一定の安定した収入を見込める個人事業者などの債務で、かつ、住宅ローンなどの担保付債権を除いた債務額が5千万円以下である場合に、裁判手続きによりその債務を大幅に減額する債務整理手続きのことです。債務者の収入をもとに債務を3年で返済する計画を立て、裁判所に申立てます。なお、債務者が返済する額については以下の最低弁済額基準以上となっています。
小規模個人再生における最低弁済基準額※1
再生手続きの対象債権総額 |
最低弁済基準額 |
100万円未満 |
対象債権総額 |
100万円以上500万円未満 |
100万円 |
500万円以上1500万円未満 |
対象債権総額の5分の1 |
1500万円以上3000万円未満 |
300万円 |
3000万円以上5000万円以下 |
対象債権総額の10分の1 |
清算価値保障原則により、再生計画に定める返済総額は、申立人が破産した場合に債権者に配当される総額を下回らないことが必要です。※2
再生計画が裁判所に認められると、3年間の返済が終われば残債務については免除されます。しかし、小規模個人再生では反対する債権者およびその債権額が半数以上の場合適用されません。
- 給与所得者等再生
給与などの安定的収入を得る見込みがあり、その変動の幅が年収の2割程度と見込まれる個人の債務で、かつ、住宅ローンなどの担保付債権を除いた債務額が5千万円以下である場合に利用できる裁判手続きです。
返済総額については、小規模個人再生における※1※2の基準に加え、再生計画前2年間の可処分所得額(給与やボーナスなどの個人所得から支払いが義務付けられている税金や社会保険料および最低限の生活費を差し引いた収入のこと。)以上であることも要します。その返済総額を3年間で返済する再生計画が裁判所に認可されると、3年間の返済が終われば残債務については免除されます。
また、給与所得者等再生では債権者が反対しても裁判所は異議を認めず再生計画案を認可できます。
- 住宅ローンに関する特例
正式には住宅資金貸付債権に関する特則といい、個人民事再生における最大のメリットである【マイホームを維持したまま債務整理ができる】というものです。裁判所に個人民事再生を申請する際に、この督促を含めた再生計画を提出し、裁判所が認可確定することで住宅ローンのリスケージュリング(返済方法の変更)をおこない、あらためて分割返済しながら住宅を維持することができます。
一般的な住宅ローンであれば、ほとんど住宅ローンに関する特例が利用できますが、以下の場合は、この特則が利用できません。
- マイホームに住宅ローン以外の抵当権などが設定されている場合
- 連帯保証人がローンの返済により法廷代位した場合
- 保証会社に代位弁済されてから6ヶ月が経過している 他
個人民事再生のメリット
個人民事再生においてのメリットは債務が大幅にカットできるほかに、上記で述べた住宅ローンに関する特例により、住宅ローンが残っていてもマイホームを手放さなくても良いことです。住宅ローンに関する特則が認可確定された場合住宅ローンの返済条件をリスケジュールし、支払を継続しながら住宅を手放すことなく債務整理ができます。この点は、マイホームを手放さなければならない自己破産との大きな違いです。
その他のメリットは、以下の通りです。
- 債務の原因が浪費やギャンブルでも利用できる
- 受任通知を送付されることで貸金業者などからの督促がストップする
- 通常、生命保険を解約したり自動車を売却する必要がない
- 債権者は、再生手続きが始まると強制執行ができない
- 再生手続き中は債務の支払いが一時的に止められる 等
個人民事再生のデメリット
- 安定収入があることが前提なため、無職の人は利用できない
- 申立から再生認可まで時間がかかる(半年前後)
- ブラックリストに登録され一定期間、ローンやクレジットカードが利用できない
- 手続きが煩雑で弁護士等に依頼することになるが他の債務整理に比べ費用が割高になる
- 再生手続きの対象債権総額が5000万円超の場合、利用できない
- 官報に公告される 等