自己破産とは
自己破産とは、経済的に破綻し債務(借金)の支払いが不可能となった債務者が、最低限の財産(家財道具など)を除いた自己の財産(不動産・自動車等)を処分換金し債権者に返済して、残った債務を免除してもらうために裁判所に申請する手続きのことを言います。
“破産した”と聞くと、“とりかえしがつかない”というイメージを持つ人もいますがそうではありません。自己破産は、債務者の借金を免除し人生をやり直すことができることを目的に制定された国の救済制度であり、裁判所の統計によると毎年10万件を超える人が自己破産を申請し、多くの人が人生の再出発をしています。任意売却OWLが仲介させていただいた破産管財物件でも破産された方が免責を受け、元気に社会復帰している姿を数多く見てきました。
自己破産手続きの大まかな流れは以下のとおりです。
- @自己破産申立
- 自己破産に必要な書類を用意し、現住所を管轄する地方裁判所へ申立てします。申立ては破産を希望する本人がおこなうことも当然可能ですが、手続き等が販雑なため、費用はかかりますが弁護士に依頼し申立て代理人になってもらうこともできます。自己破産の場合、通常は破産手続開始の申立を行えば免責の申立ても行ったとされます。
- A破産の審尋
- 裁判官が破産申立人(または代理人)と面接をおこない、債務の支払いが不可能となった原因や財産状況、免責不許可事由の有無などの質問をおこないます。
- B破産手続開始決定
- 破産の審尋の結果、免責不許可事由等の問題がないと判断されると破産手続開始決定がなされ官報に広告されます。この時点で申立人は正式に破産者となり、一時的な資格の制限を受けます。
破産者に換価できる資産がある場合
- C管財人選任
- 裁判所は破産開始決定と同時に破産管財人を選任します。破産管財人は破産申立人の換価可能な資産(家財道具等除く)を売却し、破産財団に優先する債権者(別除権者)への支払いや必要経費等を差引いた残金を各債権者の債権額に応じ平等配当します。
- D債権者集会
- 債権者に対し、破産財団の手続きや換価の進行状況についての必要な説明などが行われます。
- E破産手続きの終結
- 破産管財人が換価できる財産の全てを現金化して各債権者の債権額に応じて比例配当し、債権者集会で報告後、裁判所が破産手続きを終了します。
- F免責の審尋
- 裁判所が破産者の債務を免除することが妥当かどうかを調査・判断します。
- G免責許可決定
免責不許可決定
- 調査の結果、免責不可事由が無いと判断されれば裁判所は免責許可を決定します。しかし、調査の結果、免責不許可事由に該当すると見なされた場合は破産者の免責を認めないことがあります。
- H復権
- 免責許可が決定されると破産者としての権利の制限が回復され、復権(破産者でなくなる)となります。
破産者に換価できる資産がない場合
- C同時廃止
↓
F・G・Hへ
- 破産申立人に換価できる程の財産がないことが明らかな場合に、破産手続開始決定と同時に、破産管財人(裁判所が選任した弁護士など)の選任や債権者への配当をすることなく、破産手続きは終了することになります。
同時廃止制度は費用や手間を省き手続きを迅速におこなうためにあります。現在では自己破産において同時廃止の割合は約9割と言われています。
なお、同時廃止の場合でも破産管財同様免責手続は必要です。
免責不許可事由はおおむね以下の通りです。※あくまで概略ですが…
- 債権者に不利益を与えるために破産財団の財産を隠したり壊したり処分したこと。
- 著しく不利益な条件で債務を負担したり信用取引をしたこと。
- 特定の債権者に対する債務を返済し、他の債権者に不利益をあたえたこと。
- 浪費、ギャンブル等で著しく財産を少なくしたり過大な借金をかかえたこと。
- 破産手続開始申立1年前から破産開始手続き開始決定日までに破産しようすることを隠して株などの信用取引で財産を得たこと。
- 業務や財産状況が記載された帳簿等を隠したり偽造したりしたこと。
- ウソの債権者名簿を提出したこと。
- 裁判所の調査に協力しなかったりウソをついたこと。
- 破産管財人等の業務を不正に妨害したこと。
- 免責許可申立て前7年以内に免責許可や再生計画認可の決定をうけたこと。
- その他破産法の規定する義務に違反したこと。
裁判所による審尋の結果、上記免責不許可事由に該当すると見なされた場合、免責が認められないことがあります。
参考
破産法第252条によると、免責許可決定要件として以下のように説明されています。
第252条(免責許可の決定の要件等)
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
- 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
- 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
- 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を 害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
- 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
- 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
- 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
- 虚偽の債権者名簿(第248条第5項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第6号において同じ。)を提出したこと。
- 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
- 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
- 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ民事再生法 (平成11年法律第225号)第239条第1項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ民事再生法第235条第1項 (同法第244条 において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
- 第40条第1項第1号、第41条又は第250条第2項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。