競売の場合、売却基準価額(入札するにあたり目安となる価額で裁判所が評価人の評価に基づいて定めます)は、市場価格の約7割〜8割となります。また、売却基準価額の8割までの価額(買受可能価額)であれば入札が可能となります。競売により市場価格より大幅な低価で落札された場合、債権者に対する返済額も少なくなり、債務が多く残ることになってしまいます。
競売においては、残債務について債権者と交渉するのは基本的に債務者自身です。ご自宅等を強制的に手放させられた上、金融機関または債権譲渡先のサービサー(債権買取及び回収を専門とする会社)との交渉をしなければならず、かなりの負担となります。交渉については弁護士などに依頼をする場合も多いですが、時間と費用もかかります。
競売の場合、売却許可決定と前後し、落札者(購入者)はすぐに所有者に明渡しを求めてきます。通常、そこから1ヶ月前後の猶予がありますが、落札者によっては即時退去を求めてくる場合もあります。また、明渡しを拒んだ場合、強制執行が行われ所有者は有無を言わさず退去させられてしまいます。
一般的に競売では落札者に対し引越し費用等の金銭の交渉はできません。落札者から明渡し時期を指定され、通常1ヶ月前後で無償で明渡すとこととなります。まれに多少の引越し代を出してくれる落札者も見受けられますがほとんどは無償明渡しとなります。
競売になるとその情報が裁判所で公告されます。裁判所にいけば競売物件の物件明細書・現況調査報告書・評価書(いわゆる3点セット)が閲覧・コピーできます。またインターネット上でも同様の競売情報が全国に公開されます。3点セット中の現況調査報告書では対象物件の間取図や内部を含めた写真なども掲載されてしまいます。
また、競売情報を元に購入希望者がご自宅を確認しに来ます。なかには居住者と接触し、落札を前提とした立退きの交渉を行う人(主に不動産業者)も散見され、近所の方に居住者等の情報等を聞いて回る人もいます。
不動産競売は抵当権者等が債務者に債権の返済を求めても返済が受けられない場合に、裁判所に強制的に売却を申し立てる手続きです。裁判所がスケジュールに基づき、売却の基準価格、売却時期を決めますので、債務者が売却価格や引渡し時期について債権者と交渉することは一切不可能です。
競売物件を入札する人は不動産業者等の法人から個人に至るまで千差万別です。誰に落札されるかわからない不安を抱えたまま、ある日突然、落札者から慣れ親しんだご自宅からの退去を迫られてしまうという心理的リスクは計り知れないものがあります。